2012年6月7日木曜日

Bird and Flag

今週末、6月9日土曜日、Bird and Flag(バード アンド フラッグ)という新しいバンドで、モグラでのライブに出演します。

2000年頃から岡山でのライブ活動を本格的に始め、それから10年くらいの間様々なバンドやソロでのライブ活動を続けて来ました。
特にバンドの活動では、その活動を通じ多くの人達と出会い、一緒に演奏させてもらい、たくさんの人達とたくさんのバンドを共有させてもらいました。
これらのたくさんのバンド活動から、決して独りでは得ることのなかった多くの経験や感情を通じて、様々な事を学び続けています。
その全てのバンドが、僕にとってはとても大切なものであることは間違いありません。
しかし、時間の制約や様々な条件から、その全てを活発に継続させることは不可能で、新たな試みに心が囚われ、新たなメンバーでの挑戦を始める度に、それまでのバンドは休眠、または解散といった状態に追い込まれてしまう、そんな事を繰り返してきました。
それはある種の別れで、あらゆる望まれざる別れと同様に苦い感情を生みます。

2011年夏に自分の会社であるトリノスの移転、拡張というチャンスに恵まれ、それからもうすぐ1年、その間これから先出来るだけ永く仕事や音楽に集中して取り組める環境作りに没頭していました。そして、いよいよそれらの作業が一区切りを迎え、この春からは本格的なレコーディング業務を再開し、またたくさんの人達とみなさんの作品制作に取り組む日々が始まりました。

そして、自分の番。

ソロでのライブ活動や作品制作は、何一つ制限が無く、まさに自由で、それは本当に素晴らしいものです。しかし、自分以外の複数の感性と触れ合いながら、瞬間瞬間音を紡いでいくあの感覚。閃きを一つの小さな点に持ち寄るあの感覚。それらはソロでの活動からはなかなか得られないものです。
再度、これまでたくさんの人達からもらった貴重な経験を踏まえた上で、バンド活動にのぞみたいと強く思いました。
そこで、まずは骨格となる最低限の要素のバンド、その骨格だけでも唄をしっかり形作り、立ち上がらせることのできるスリーピースバンドを作りました。

松下トオル vocal,guitar,etc
舩津龍太 bass,vocal
谷岡英明 drums

音に現れているのはその人自身。これは至極当たり前の事のようですが、実感している人が果たしてどれだけいるのか。自分も怪しい。それでも、その人の作品から感じたもの、またはその人が自分の音を通じて近くつながっている人達は、その人自身を良く現し、時にはその人自身を形どっているように強く感じることが、いくらかは出来ます。いつまでも憧憬に隷属し、誰かに、または何かになりたい人の音は、いつまでたっても誰かの、何かの音のようです。孤立を恐れ、対立するものを生まないことに専心する人の音は、だれの音とも馴れ合うようです。ただ楽しく、良く揃ったリズムと言葉の外観を整えるために音を集める人の周りには、いつも笑顔と酒、日毎のちょっとしたパーティが続きます。
自分の周りには。
この10年近い決して少なくない時間を経て、今僕の近くに居てくれる人達。僕は誇りに思っています。
その中で、僕からのリクエストにイエスの返事をくれたメンバーです。
音楽を、また僕とは違う形で愛している人達に対する、これはある種の言い訳なのかもしれないと、いつもどこかで薄々思うのですが、“K”や“Pavement”が全盛のローファイブーム真っ只中を通過した僕は、音楽表現における音楽プレイヤーとしてのスキルは、極めて重要度の低いものだと思っています。もちろん、このバンドのメンバーやサポートしてくれるみんなは技術的にもしっかりした裏付けのある人達ですが、僕が彼らと一緒に演奏したいと強く思う動機は、そのスキルにありません。
“すごい!上手い!と思わせたいというミュージシャン的なエゴをアーティストは最も恐れ、遠ざけなくてはならない。”これは鮮烈に僕の中に刻まれたある海外アーティストの言葉です。表現欲求にかられ、内なる何かを現出させようとする人間をアーティストと呼ぶなら、これもまた当たり前の言葉のようです。しかし、少なくとも僕が通過してきたところでは、音のするところに現れる人たちの多くが、このミュージシャン的なエゴを満たしたい人たちでした。
“○○はすごい!この間のライブ動員○○人だって!!”“○○が○○と契約だって!”“○○は何ヶ月連続の作品リリースだって!!”“○○は○○で優勝だって!!” これは実際に頻繁に以前の僕の周囲にあった会話です。だから…?と思う人がいるはずです。失笑した人もいるはずです。今更遅いですが、この人達の何かを僕は否定するものではありません。信じたものに向かって突き進む人は、本当に美しいものです。ただ、それらの人達と親交を深めれば、心の中に虚ろが、やがて寂しさが芽生えるのも本当です。
同じと言わないまでも、どこかしら似た感覚で音楽と真に自由に向き合っている人達と、出来るだけ制限なく一つのバンドで向かい合いたい。その為の骨格となるスリーピースバンド。そして、そこに様々なアーティストをサポートメンバーとして迎えながら、あらゆる可能性にチャレンジしていきたい。それが新たなバンド“Bird and Flag”です。

初めてのライブでは、キーボード、フルート、コーラスを担当してくれる+kyokoさん、チェロの片山智夫さんをサポートメンバーに迎えます。
この新しいバンドで何が出きるのか、いつまで進めるのか、正直わかりません。
ただ、既にこのバンドは新たな経験と感情、興奮と幸せな瞬間を僕にくれます。
音楽活動だけでなく、いつも近くで見守っていてくれる人全てに感謝します。
ありがとうございます。

Bird and Flag、お披露目は2012年6月9日、MO:GLAにて。

>>ライブの詳細はこちら




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